
レインウェアを使い続けていると、こんな経験はありませんか?
「買ったばかりの頃は、雨の水滴が生地の表面を玉のようにコロコロと転がり落ちていたのに、最近はベタっと染み込むようになってしまった…」
その現象、レインウェアが持つ「撥水(はっすい)性能」の低下が原因です。そもそも撥水とは永久的ではなく、経年低下するものとはいえ、水を弾かなくなるだけで、ウェアは水分を含みずっしりと重くなり、なんとなく気分まで落ち込んでしまいますよね。
実は今、この「撥水」の世界に、地球環境に配慮した撥水基準への移行が進んでいることをご存知でしょうか。今回は、環境配慮の国際スタンダード「C0(シーゼロ)撥水」について、その最前線を「レインウェア研究所」が徹底解説します。
基礎知識:意外と知らない「防水」と「撥水」の違い

本題に入る前に、とても重要な「防水」と「撥水」の違いについて、簡単におさらいしましょう。
防水とは?
生地の裏側で、水の侵入を完全に食い止める機能です。ウェアの生地裏面に施された樹脂がこの役割を担い、ウェア内部への浸水を防ぐ最後の砦となります。
撥水とは?
生地の表面で、水滴が玉のように弾く機能です。蓮の葉に見られる現象です。これが機能することで、生地自体に水が含むことを防ぎます。但し、この撥水とは永久的なものではなく、経年低下します。
では、なぜ撥水性が重要なのでしょうか。
撥水性が低下して生地表面が水膜で覆われてしまうと、ウェアが水を含んで重くなるだけでなく、その水分が蒸発する際に体の熱を奪い、急な体の冷えにも繋がります。また、雨水の水温を感じやすくなり「雨水が漏れた」という印象を受けます。
撥水性は、雨の日のパフォーマンスと安全性を保つためにも不可欠な機能なのです。
なぜ今?撥水加工の主流が変わる、その理由

これまで、レインウェアの撥水加工には、「有機フッ素化合物(PFAS)」を含むフッ素系の撥水剤(C8タイプやC6タイプ)が主流でした。これらは非常に高い撥水・撥油性能を持つ一方で、一つの大きな課題を抱えていました。
それは、PFASの一部に、自然界で分解されにくく、人体や生態系への長期的な影響が懸念される「PFOA」や「PFOS」といった物質が含まれていた、あるいは生成する可能性があったことです。
こうした背景から、世界的に環境規制が強化され、アパレル業界全体でPFASを使用しない「フッ素フリー(PFASフリー)」への移行が急速に進んでいます。レインウェアも、例外ではありません。
環境配慮の国際スタンダード「C0(シーゼロ)撥水」
その「フッ素フリー」を実現するのが環境配慮の国際スタンダード「C0(シーゼロ)撥水」です。
C0撥水は、その名の通りPFAS(有機フッ素化合物)を一切使用しないため、人にも環境にも安全な撥水技術として海外アパレル製品ではスタンダードである一方、日本のアパレル製品も近年、スタンダードになりつつあります。
しかし、その一方で、C0撥水には、こんな課題がありました。
「従来の撥水剤に比べて、撥水が弱い」
従来の水の弾き方ほどの撥水力はなく、リュックの肩ベルトが当たる部分や、頻繁に屈伸する膝部分、バイク・自転車の乗車時にサドルに当たる尻部などから、雨水の水温が感じやすいとの声もあがっていました。
トキワの答え。常識を覆す『高密度ファブリック × C0撥水』

「環境への配慮は当然。しかし、仕事で使う道具の性能は妥協できない」
そんなプロフェッショナルな皆様の声に応えるのが、トキワが導き出した答えです。私たちは、撥水剤だけに頼るのではなく、1本の糸から織りなす段階でのアプローチで、この課題を克服しました。
その技術を結集したのが、新製品「レインナビゲーター」です。
第一の壁:物理的に水を弾く「高密度生地」
「レインナビゲーター」の生地は、一般的なレインウェアとは比較にならないほど、タテ糸とヨコ糸が高密度に織り上げられた特殊な生地を採用しています。糸と糸の隙間が極限まで詰められているため、生地自体が物理的なバリアとなり、水滴が繊維の奥へ浸透しにくくなっています。
第二の壁:環境配慮の国際スタンダード「C0撥水加工」
この高性能な生地の表面には、環境配慮の国際スタンダード「C0撥水加工」を施します。「生地の力」と「環境に負荷をかけない撥水加工」 この二つの壁を組み合わせることで、撥水剤だけに頼っていた従来品とは一線を画す、環境配慮型の高い撥水性能が生まれるのです

この革新的な技術により、私たちは驚くべき成果を達成しました。
「レインナビゲーター」は、環境に配慮したC0撥水でありながら、従来のフッ素系撥水加工を施したウェアを上回る初期撥水性能(JIS L 1092 スプレー法において4級)が実証されています。
C0撥水でも、十分に撥水性能を発揮できるようになったのです。
更に、この生地は密度だけでなく織り方にも工夫がされており、一定の弾力性があります。
弾力性となるとストレッチ素材が現在、主流となっておりますが、ストレッチ素材の多くがポリウレタン製の糸を使用することで、その性能が実現されています。しかし、ポリウレタン製は過去記事でも解説した通り、加水分解(水に弱い性能)という特性があることから生地の耐久性には課題が残ります。
一方、レインナビゲーターの生地はポリウレタン糸を使用せずに糸の織り方によって一定の弾力性が実現するようになり、レインウエア本体の構造と共にウエア着用時の「動きやすさ」を実現しています。
環境に配慮したパッケージ(収納袋つき)

トキワでは、環境負荷を減らすものづくりを、製品を包むパッケージにも反映させています。
レインナビゲーターでは、これまでレインウェアで一般的だった、プラスチック製(PVC素材)の透明な包装材の使用を廃止しました。その代わりに、レインウェア本体と同じ丈夫な生地で作った「専用収納袋」をパッケージとして採用しています。
これにより、お客様が廃棄するプラスチックごみを削減できるだけでなく、この収納袋はそのまま製品の保管・携帯用として長くお使いいただけます。使い捨ての包装材をなくし、資源を有効活用する。これもトキワの環境へのこだわりの一つです。
よくある質問(FAQ)
環境と性能を両立する「C0撥水」。ここでは、皆様からよく寄せられる質問にお答えします。
レインナビゲーターに使われている生地は、従来のフッ素系撥水より性能が良いのですか?
「レインナビゲーター」に採用されている『高密度ファブリック × C0撥水』の組み合わせは、従来の一般的なフッ素系撥水剤を施したウェアを上回る、初期撥水性能を記録しています。 これは、撥水剤という溶剤に頼るのではなく、糸を高密度に織り上げた「生地本来の力」で水を弾く設計に基づいているからです。しかも経年低下する薬剤だけに頼ってきたこれまでとは異なり、持続性があります。性能と環境配慮、その両方を高次元で実現しています。
撥水効果はどのくらい持続しますか?効果が弱くなったら、どうすれば良いですか?
ご使用環境や洗濯の頻度によっても異なります。 もし撥水性が落ちてきたと感じたら、まずは洗濯表示に従ってウェアの汚れをきれいに洗い流し、その後当て布をしたアイロン(低温)やドライヤーの温風を生地の表面に優しく当てることで、撥水基が再び立ち上がり、性能が回復します。その温度が高過ぎると生地を傷める原因になりますのでご注意ください。
「人や環境に安全」とは、具体的にどういうことですか?
C0撥水が安全とされる理由は、従来の撥水剤に含まれていた「PFAS(有機フッ素化合物)」という物質を一切使用していないからです。PFASは自然界で分解されにくく、環境や人体への長期的な影響が懸念されています。C0撥水は、こうした懸念物質を含まないため、着用される方はもちろん、地球環境にとっても安全です。
他のメーカーのC0撥水ウェアと、レインナビゲーターの違いは何ですか。
最大の違いは、撥水性能を撥水剤だけに依存していない点です。多くのウェアが既存の生地にC0撥水剤を加工するのに対し、私たちは1本の糸「生地開発」の段階から撥水性能を設計しています。高密度生地という物理的なバリアと、最新のC0撥水加工という化学的なバリア。この組み合わせが、レインナビゲーターならではの高い持続性と性能を生み出しています。
C0撥水に弱点はありますか?油汚れなどはどうですか?
一般的に、C0撥水(フッ素フリー撥水)は、強い油を弾く「撥油性」においては、フッ素系の撥水剤に劣ります。そのため、機械油などが大量にかかるような特殊な環境には適さない場合があります。 しかし、業務中に想定される雨水や泥水、食品の軽い油汚れなどを弾く性能は十分に備えておりますので、ほとんどのプロの現場で安心してお使いいただけます。
まとめ:未来の「当たり前」を、今あなたの手に。

「撥水」の重要性、ご理解いただけたでしょうか。
これからのレインウェア選びは、防水性や透湿性に加え、「どんな撥水加工が施されているか」という視点が、業務利用における新たな常識となるでしょう。
環境性能と、業務の現場で求められる実用性能。その両方を追究する トキワの「レインナビゲーター」は、まさにその思想と技術を体現した一着です。
雨の日も、地球にも、そして自分自身にも心地よい選択を。
トキワの技術を結集した新製品「レインナビゲーター」は2026年2月〜3月一般販売開始予定です。
製品の仕様など、ご質問などがございましたらお気軽にお問合せ下さい。



