私たちが取り扱うレインウェアは一般的に馴染みが薄い。なぜなら雨が降れば大半の人が雨具として利用するのは傘。

しかし雨の日に傘を差すことのできない自転車やバイク利用の人たち、あるいは屋外作業をする人たちにとって防水性の高いレインウェアは必需品。そのレインウェアについて、合羽(かっぱ)と呼ばれた時代から現在まで、主たる製品の移り変わりを、素材と防水機能を中心に説明します。

合羽の歴史

まだ合羽の伝わる16世紀以前、「蓑(みの)」で風雪や雨を凌いだものが、その始まりといわれています。雨の多い日本では雨が降るとさらに湿度が高くなり、これに対応して出来たものが蓑で、乾燥した草で出来た蓑は雨の中でも十分に風を通し、しかも雨を中まで通さないという、後の時代でも労働用のレインコートとしても理想的だったようです。時代劇の中で三度笠とセットで見たことのある人も多いかと思います。

そして江戸中期を過ぎ元禄後半、「紙合羽」が誕生します。桐油紙(とうゆがみ)ともいわれる油紙がその素材で、厚手の和紙をわさび糊で繋ぎ合わせて、その上にカキ渋を塗って乾燥、更にその上に桐油を何回も塗って乾燥したじょうぶな防水紙を表に、裏には薄布を合わせた紙合羽です。この素材の油紙は、現在キャラメルや飴などべたつくお菓子を直接包む紙として見たことがあると思います。

明治時代末期には、ゴム引きの「防水マント」が出現しました。弊社が創業した昭和初期の頃もこの片面ゴム引布の大人用、子供用のマントが主流でした。

その後「羽二重(はぶたい)」のレインコートが登場します。羽二重とは、経糸2本、横糸1本で織られる生地をいい、素材は絹100%が多いのですが、ポリエステルやレ-ヨンの場合もあります。そもそも日本では近世から作られ始めたと言われ、主たる生産地は福井県。薄くて光沢感があり、風合いがとても良いことからレインコート、特に女性に好評でした。一方で、この頃からより防水性が求められるようになって来ました。現在、私たちがこだわる「完全防水への追求」の始まりです。

昭和中期から長い間使われたのが「手貼のゴム合羽」と「ギャバ合羽」です。「手貼りのゴム合羽」とは綿布の片面にゴムを引いた生地を用い、ベンジンでそのゴムを溶かしてつなぎ合わせます。水産と陸上の両用として重宝されました。その昔、魚屋さんが使用していた前掛けは全てこの素材でした。そして「ギャバ合羽」は、ギャバの正式名称はギャバジンと呼ばれ、スフ糸を綾織にした密度の高い基布に、防水処理を施した生地で、光沢やしなやかな風合いが特徴的です。この素材で作られたコートが、戦時中に兵士たちが雨の中でも平気でいられるように防水コートとして改良され、後のトレンチコートの前身とされています。ギャバの魅力は防水だけにとどまらず、撥水や耐久性に優れた素材である点も長い間重宝された理由のひとつです。

この2点の合羽は、手法こそ現在とは異なりますが、こんにち私たちがこだわる「完全防水への追求」の一つである、縫い目からの漏水を防ぐための「目止めテープ加工」が施された始まりです。又この2点は、布にゴムを貼り合わせるという、布とゴムの特性を併せ持った複合材料で、ゴム引布が合羽の素材として世の中に流通された始まりでもありました。

その後、発泡性のゴム引布も登場。発泡ゴムスポンジの特徴のひとつ「保温性」を生かして、防寒用として製品化されました。これらをきっかけに、現在の合成繊維を表に、その裏面には各種合成樹脂を防水加工した引布素材のレインウエアが次々に誕生しました。

【参考資料:平凡社「百科事典」】

現代のレイン ウェアの素材

①表素材(防水と撥水の違い)

レインウェアに使われている「防水素材」の説明の前に、混同されがちな「撥水(はっすい)素材」との違いをまず説明しておきます。

この撥水と防水とは似て非なるもので、撥水を防水と表現する人がとても多くいます。「撥水」とは「生地の表面に水がついた場合に、水を玉状にしてはじく」加工のことで、長時間雨にさらされたり、水滴の上から圧力が加わったりした場合には、撥水加工では防ぐことは出来ません。撥水度は経年によりその機能は低下します。

生地(織物・編物・不織布)は、糸を使って作られており、必然的に糸と糸との間には隙間があり、その隙間が通気性をもたらしたり、生地の柔らかさ・しなやかさの源になってはいますが、その隙間があることで、水が生地の裏側に染み出す原因になります。肉眼では織り目や編み目がしっかり詰まっているように見えても、上から圧力が加わることで水滴は形を変えて生地の中に染み出してしまいます。

現代のレインウェアの表素材に使用されているのは、合成繊維の「ナイロン」と「ポリエステル」のほぼ2つです。かつては大半がナイロンでしたが、こんにちではナイロンと比較して強度面で劣り、色移染(別の色生地に色が移る現象)の危険性を含んでいるものの安価なことからポリエステルが使われることも多く見られます。

 撥水の復活

経年劣化する撥水ですが、その機能を復活することが出来ます。
生地の表面にドライヤーやあて布をしてアイロン、つまり熱を加えると生地の表面の繊維が起きて、再び水をはじくようになります。「蓮(はす)の葉」の表面の原理です。限界はありますが、是非試してみてください。

②防水素材の原理と加工法

次に防水素材ですが、ここでの説明は「レインウェアの素材」を前提としています。

生地の密度を高め、生地目からの染み出しを防ぐ加工が防水加工で、その加工を施した生地が防水布です。防水布は、生地自体を防水機能のある構造で作っており、その手法には3種類あります。「トッピング加工」、「コーテイング加工」、「ラミネート加工」です。

引布生地の原点、ゴム引布はトッピング加工で、生地の裏面にコンパウンド状に練った合成ゴムの樹脂をはり合わせることで水の染み出しを防ぎます。国内生産がほとんど無くなってしまった現在では、レインウェアの素材としてのゴム引布はほとんど見られなくなってしまいました。

コーテイング加工は、生地の裏面にポリウレタン(PU)樹脂をベタ塗りし、生地目を完全に塞ぐ被膜を作ることで水の染み出しを防ぎます。このポリウレタン樹脂はゴムのように柔らかく弾性や耐油性に優れており、特にレインウェアの素材としては薄く引くことが出来ることからその軽量感が好まれ、レジャー用には最適ですが、後述するラミネート加工と比べて耐摩耗性や防水性に劣ります。

ラミネート加工は、生地とは別に用意したフィルムをはり合せることで水の染み出しを防ぎます。ここで説明するフィルムは、現在レインウェアの生地として最も多く流通しているポリ塩化ビニル(塩ビ・PVC)樹脂です。塩ビをラミネート加工したレインウェアは安価で他の樹脂よりも強度や防水性に富んでいることから特に作業用として重宝されます。この私たちが使用する防水素材は、雨具として一般的に使われる傘の生地より約20倍から40倍の防水性があります。

<耐水圧(防水性)の目安>  ※ 防水性試験:JIS 1092 耐水度試験A法

小雨耐水圧300mm
中雨耐水圧2,000mm
大雨耐水圧10,000mm
耐水圧20,000mm
耐水圧500mm
弊社の
レインウェア
耐水圧10,000mm~
20,000mm

③透湿防水素材

透湿性とは蒸気状態の水分を生地の外側へ逃す性質です。防水生地は雨を通さない特徴を持っていますが、生地の内側の汗なども逃さないため、湿気がこもり蒸れにつながります。

その不快さを解消する為に進化した加工が透湿防水加工であり、それを施した素材が透湿防水素材です。水を通さないことに特化した防水加工に対して、より快適な着心地を実現する為に液体である水が通ることを防ぎつつ、気体になった湿気だけは通すという非常に高度な加工技術です。

この高度な機能をどのように発揮するかというと、雨や水滴よりも小さく、水蒸気の分子よりは大きな孔(あな)が開いた特殊な被膜やフィルムを用いることが一般的です。防水と透湿を組み合わせることで雨など水の侵入を防ぎつつ、水蒸気を外へ排出することで生地内の蒸れを防ぎます。

ポリウレタン樹脂に水溶性の有機化合物を混ぜて生地面に塗布(コーティング)した後に、水洗槽を通すことで有機化合物を溶かし気体通過できる微多孔(びたこう)状の被膜を生成します。これが生地の裏面に透湿ポリウレタン樹脂をコーテイングした2層といわれる一般的な透湿防水布です。

もう一つはフィルムを用いた透湿防水布で、そのフィルムを製造する場合も基本的には同じ理屈ですが、透湿フィルムには無孔質(むこうしつ)のタイプも存在します。透湿性は多孔質フィルムの方が高くなりますが、防水性は無孔質フィルムの方が高くなります。これらのフィルムを2層(前述)の透湿防水布にラミネート加工をしたのが3層といわれる透湿防水布で、2層の被膜に使われるポリウレタン樹脂の摩擦摩耗の弱点を補うこともできます。

防水性と透湿性は反比例関係にあり、どちらを優先させるかはその使用目的に合せて選択された方が良いと思います。又、この透湿性は、防水性と同じように数値で表すことも出来ますが、透湿の度合いは防水度とは異なり、体感にかなりの個人差があり、加えて発汗にも個人差があるので、その効果を論じることは、かなり困難です。