同じくらいの量の雨でも、降り方は土地でまるで違う

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日本は南北におよそ3,000kmにわたって伸び、背骨のように山地が走っています。そのため、雨の降り方は土地ごとに大きく異なります。

興味深いのは、「降雨量」がほぼ同じでも、「降雨日数」はまるで違うことです。同じ量の雨を120日ほどで降らせる土地もあれば、180日近くかけて降らせる土地もあります。夏に集中する土地があり、冬こそが本番という土地もあります。

日本各地の雨模様を、北から南までのぞいてみましょう。

同じ日本なのに、なぜ高知は年間2,500mm超え・東京は1,500mm台なのか

株式会社トキワ|高知は年間2,500mm超え・東京は1,500mm台という降水量の差を表すイラスト

日本は南北に長く、地形も複雑なため、地域によって雨の降り方や総量は大きく異なります。気象庁の平年値によると、高知市の年間降水量は2,666.4mmで、都道府県庁所在地の中でも全国トップクラスとされています(気象庁データに基づく目安)。宮崎・鹿児島も上位に名を連ねる一方、東京(千代田区)は1,528.8mm程度です。高知の雨量は東京のおよそ1.7倍にのぼる計算になります。同じ国内でも、雨の総量は倍近く異なることがあるようです。四国山地にぶつかる湿った南風が、こうした差を生み出す一因といわれています。

九州の雨は『激しく短く』ではなく『強く、長く降り続く』雨

株式会社トキワ|九州の雨は「強く、長く降り続く」雨であることを表すイラスト

九州地方の雨には、ひとつ特徴があるといわれています。10分間あたりの降雨の強さそのものは他地域と大きくは変わらない一方で、非常に強い雨が長時間続きやすい傾向があるとされています。東シナ海から流れ込む大量の水蒸気が九州の山地にぶつかり続けることで雨雲が発達・停滞しやすく、梅雨前線も停滞しやすい地形条件が重なっていることが背景にあるようです。「激しいけれど短時間で終わる雨」ではなく「強さが続く雨」——この違いが、屋外業務への影響にもつながっていきます。こうした強く長く降り続く雨に対応するには、業務用レインウェアの防水性・耐久性が特に重要になると考えられます。地域の雨の個性を知ることは、備えの第一歩といえるかもしれません。

瀬戸内海を挟んで隣り合う県でも、傘の出番はこんなに違う

株式会社トキワ|瀬戸内海を挟んで隣り合う県でも傘の出番が違うことを表すイラスト

瀬戸内海沿いの県同士でも、降水傾向はずいぶん異なります。高知のすぐ北に位置する香川県の年間降水量は1,150.1mm程度とされ、高知の半分以下です(気象庁データに基づく目安)。また岡山県は「降水量1mm未満の日」が年間276.8日と全国最多という統計もあり(気象庁データに基づく目安)、瀬戸内側は「晴れの国」と呼ばれるほど雨が少ない地域として知られています。中国山地・四国山地が日本海側・太平洋側双方の雨雲を遮る地形によるものと言われています。「沿岸部だから似たような雨」とは限らないようです。地域ごとの雨量差が大きい日本だからこそ、業務用レインウェアも全国対応できる選び方を意識しておくと安心かもしれません。

「雨処・北陸」——弁当忘れても、傘忘れるな

株式会社トキワ|雨処・北陸「弁当忘れても、傘忘れるな」を表すイラスト

北陸には「弁当忘れても、傘忘れるな」という言い伝えがあります。金沢を取材した記録によれば、話を聞いた人が全員この言い回しに触れたといいます(ミツカン水の文化センター『水の文化』50号)。

数字を並べると、この言い伝えの背景が見えてきます。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、金沢の1月は31日のうち23.4日が雨か雪の降る日です。同じ1月の東京は4.5日ですから、およそ5倍。日照時間も金沢62.3時間に対して東京192.6時間と、3分の1ほどにとどまります。

北陸の雨の本番は、梅雨ではなく冬です。金沢の年間降水量2,401.5mmのうち、およそ47%が11〜3月に降ります。最も降水量の多い月は12月。太平洋側とは逆の構造といえます。

降り方にも特徴があります。気象庁は「しぐれ」を「晴れや曇りが繰り返し、断続的に雨や雪の降る状態」と定義し、用例として「北陸地方ではしぐれる」を挙げています(気象庁 予報用語「降水」)。降り続くのではなく、降ったり止んだりが繰り返される。だから傘を手放せない——そう考えると、あの言い伝えは実によくできています。

冬に鳴る雷は、日本でいちばん多い

株式会社トキワ|冬に鳴る雷は日本でいちばん多い(北陸の冬)を表すイラスト

金沢は年間雷日数45.1日で、全国の地上気象観測地点の中で最多です。しかもその3分の1以上が12月と1月に集中しています。冬に雷が鳴る土地、と言えばイメージが伝わるでしょうか。

屋外で働く方の視点で見ると、北陸の冬は「一度の激しい雨」ではなく「弱い雨や雪が、ひと月に20日以上続く」雨です。着たままの時間が長くなるぶん、耐水圧のピーク性能よりも、透湿性や軽さ、着脱のしやすさが効いてくるのかもしれません。

「沖縄」——上陸ゼロなのに、接近は全国最多

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沖縄は台風の常襲地として知られていますが、気象庁の統計上、沖縄に台風が「上陸」することはありません。気象庁は「上陸」を「台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸に達した場合」と定義しており、台風が沖縄本島を横切っても統計上は「通過」として扱われるためです(気象庁 予報用語「台風に関する用語」)。

一方、接近数で見ると沖縄地方は年7.7個で、全国の地方区分の中で最多です。北海道の1.9個の約4倍にあたります(気象庁 台風の平年値・1991〜2020年)。しかも5月から12月まで続きます。台風への備えが暮らしに組み込まれている土地、という言い方ができそうです。

雨の降り方も本州とは異なります。那覇の年間降水量2,161.0mmは金沢の2,401.5mmとほぼ同じですが、那覇はそれを123.9日で降らせ、金沢は177.3日かけて降らせます。1日で100mm以上降る日は那覇が年3.0日、金沢は0.6日。「北陸は長く弱く、沖縄は短く強く」という対比が、そのまま数字に表れています。

意外なのは、沖縄が「日照時間の長い土地」とは限らないことです。那覇の年間日照時間1,727.1時間は、東京の1,926.7時間より短いのです。

また、沖縄県の住宅は96.5%が非木造(鉄骨・鉄筋コンクリート造など)で、全国平均の46.0%を大きく上回ります(令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点)。統計そのものが理由を説明しているわけではありませんが、風雨の激しい土地の暮らしを考えるうえで印象に残る数字です。

「東北」——雨よりも雪? 答えは日本海側と太平洋側で分かれる

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「東北は雨よりも雪では」と思われがちですが、気象庁の平年値を並べてみると、東北をひとくくりにはできないことが見えてきます。

青森と仙台を比べてみます。年間降水量は青森1,350.7mm、仙台1,276.7mmとほぼ同じ。ところが雨や雪の降る日数は青森162.4日に対して仙台99.4日で1.6倍、年間降雪量は青森567cmに対して仙台59cmと9.6倍もの差があります。同じくらいの量の水が、日本海側では「長く、雪として」降り、太平洋側では「短い日数で、雨として」降っているわけです。

「暗さ」でも東北は際立ちます。秋田の年間日照時間1,527.4時間は県庁所在地の中で最も短く、1月の日照は39.0時間——1日あたり1.3時間ほどしかありません。

そして近年の変化は、むしろ「雪より雨」の方向を指しています。仙台管区気象台によると、東北地方では1時間降水量30mm以上の短時間強雨の発生回数が直近10年平均で最初の10年の約1.9倍に増えた一方、日降雪量20cm以上の大雪の日数は減少しています(東北地方のこれまでの気候の変化)。「東北は雪への備え」という前提だけでは、足りなくなってきているのかもしれません。

「北海道」——梅雨がない土地の、雨との付き合い方

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北海道に梅雨がないというのは、言い伝えではなく気象庁の見解です。気象庁は梅雨入り・梅雨明けの発表を「全国(梅雨のない北海道を除く。)を12の地域に分けて」行うと明記しています(気象庁 よくある質問「梅雨について」)。同じページには「北海道でも雨や曇りの日が多い梅雨のような時期がある年がありますが、年による差が大きく」、季節現象として扱うことは難しいという説明もあります。いわゆる「蝦夷梅雨」は、気象庁の予報用語には収録されていない通称です。

数字にもはっきり表れます。札幌の6月の降水量は60.4mm。東京167.8mmの約36%、福岡249.6mmの4分の1ほどです。しかも札幌では、6月は年間で3番目に雨の少ない月にあたります。本州が最も降る月に、北海道は年間でも指折りに降らないのです。札幌の雨の山は9月(142.2mm)にずれ込みます。

面白いのは、札幌が「雨が少ない」わりに「降る日は少なくない」ことです。年間降水量1,146.1mmは県庁所在地の中で少ないほうから3番目ですが、雨や雪の降る日は年143.5日で多いほうから9番目。1回あたりの雨量が8.0mmと小さいだけなのです(那覇は17.4mm)。しとしと降る日が、意外と多い土地といえます。

道内の差も大きく、網走の年間降水量844.2mmは全国の地上気象観測地点で最も少ない一方、倶知安の年間降雪量921cmは全国最多です。「北海道」とひとくくりにすると、実態を外してしまいます。

『いつもの雨』が通用しなくなってきた——線状降水帯・ゲリラ豪雨という新語の登場

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ここまでは地域ごとの雨の「個性」の話でした。しかし近年は、この個性を揺るがす変化も起きているようです。線状降水帯やゲリラ豪雨といった言葉を耳にする機会が増え、集中豪雨の発生傾向は全国的に増加している可能性が指摘されています。こうした変化を踏まえると、業務用レインウェアの備えも全国どのエリアでも見直す価値があるといえるでしょう。「地域の雨の個性」だけでは説明できない変化が起きつつあるのかもしれません。線状降水帯や近年の気象情報の変化については、以前公開した気象情報に関するコラムで詳しく解説していますので、気になる方はぜひそちらもあわせてご覧ください。

『うちの地域は雨が少ないから』を理由に、レインウェア選びを後回しにしていませんか

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地域ごとの雨の個性は、雑学として楽しい話です。とはいえ、業務用レインウェアを選ぶ際には、こうした地域差を踏まえつつも全国対応できる備えを意識しておくことが大切なのかもしれません。線状降水帯のような極端な大雨は、もはや特定の地域だけの話ではなくなりつつあるという指摘もあります。「うちのエリアは雨が少ないから」「元々多雨地帯だから慣れている」——そうした従来のイメージだけで屋外業務の備えを判断するのは、少し心もとない時代になってきたという声も聞かれます。雨の個性が土地ごとに違うということは、本来必要な備えも土地ごとに違うということです。そのうえで、極端な大雨への備えという一点においては、どのエリアにも共通して求められるようになってきました。トキワでは、こうした地域差を踏まえたうえで全国対応のサポート体制を整えており、品質チェックからスピーディな納品までのトータルサポート事例でもその取り組みをご紹介しています。地域を問わず安心して業務用レインウェアを選べる体制も、一つの選択肢として検討いただけるのではないでしょうか。

雨は土地の個性、備えは全国共通——資料館からのひとこと

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雨の降り方は、その土地の地形や気候が生み出す個性です。高知の激しい豪雨も、瀬戸内の穏やかな晴天率も、北陸の冬の時雨も、北海道の梅雨のない六月も、それぞれの土地の物語といえるでしょう。一方で、極端な大雨への備えという意味では、地域を問わず共通して求められる時代になりつつあります。地域ごとの雨の特徴を踏まえたうえで、業務用レインウェアを全国対応の視点で選んでおくことが、これからの屋外業務には求められるのかもしれません。レインウェア研究所では、こうした雨にまつわる話題を今後も発信していきたいと考えています。次回はまた違う切り口で、雨の世界をのぞいてみましょう。

地域ごとの雨の特徴を踏まえたレインウェア選定や、極端な大雨への備えとしての業務用レインウェアの見直しについてご相談がある方は、トキワまでお気軽にお問い合わせください。全国どちらの現場からのご相談も承っております。

参考文献