耐水圧が高ければ濡れない?レインウェアの防水を決める「生地・仕立て・デザイン」

レインウェアを選ぶとき、「耐水圧10,000mm」「耐水圧20,000mm」といった数値を目にします。数値が高いほど防水性に優れているように思えますが、耐水圧が示しているのは、基本的に生地が水圧にどこまで耐えられるかという物性試験結果です。

実際のレインウェアにはミシンで縫った針の穴があり、更に袖口やフード、ファスナーなど、水が入りやすい部分もあります。生地の耐水圧が高くても、縫い目のテーピングや水の浸入を防ぐ設計が不十分なら、雨水は別の経路からウェア内へ入ります。

そこで本記事では、業務用レインウェアを長年扱ってきたトキワの品質観に基づき、防水性能を「生地」「仕立て」「デザイン」の3要素に分けて解説します。

この記事の結論

  • 耐水圧は「生地」の防水性能を示す重要な指標
  • ただし、製品全体の防水性能は「生地・仕立て・デザイン」の3要素で決まる
  • 耐水圧を候補選びの基準にしつつ、縫い目のテーピングと、水が入りやすい部分の設計まで確認する

耐水圧とは? 「生地が水圧にどこまで耐えられるか」の試験値

耐水圧とは、生地に水圧をかけたとき、どの程度まで水の浸入を防げるかを表す指標です。一般的に水柱の高さに換算し、mmで表します。たとえば耐水圧20,000mmは、高さ20mの水柱による圧力に相当する水圧へ生地が耐えられる、という意味です。

JIS L 1092の耐水度試験には、A法(低水圧法)とB法(高水圧法)があります。A法は薄手のレインウェアや傘など、B法は厚手のレインウェアやスキーウェアなど、より高い水圧に耐える素材の評価に用いられます。いずれも試験用の生地に水圧を加え、裏側に水滴が3滴現れた時点を測りますが、A法は600±30mm/minで水位を上げ、結果を主にmmH₂Oで示します。B法は100kPa/minで加圧し、結果を主にkPaまたはmmH₂Oで示します。したがって、耐水圧の数値は、同じ試験方法・前処理条件(未洗濯か洗濯後かなど)で測ったもの同士を比較する必要があります。

試験方法主な対象加圧条件結果表示
A法(低水圧法)薄手のレインウェア・傘など600±30mm/min主にmmH₂O
B法(高水圧法)厚手のレインウェア・スキーウェアなど100kPa/minkPaまたはmmH₂O

試験方法の区分と加圧条件は、JIS L 1092(繊維製品の防水性試験方法)に定められています。

トキワの「レインナビゲーター®」(品番2030)は、品質検査報告書で耐水度(JISでの耐水圧の呼び方)26,000mmを確認しています。試験はJIS L 1092 B法(高水圧法)で、100kPa/minの速度で水圧を上げ、水滴が3滴出た時点を測定しています。これは生地の性能を具体的に示す一次情報です。ほかの製品と比べるときは、同じB法で測った数値かどうかを確認してください。

一方で、耐水圧だけでは次の項目までは分かりません。

耐水圧から分かること耐水圧だけでは分からないこと
試験した生地が水圧に耐える性能縫製箇所が適切にテーピングされているか
同じ試験方法・条件で測った生地同士の比較袖口・フード・前立てなどから水が入りにくい仕立てになっているか
試験時点の生地の測定値着用時の発汗、経年劣化、お手入れ後の状態

耐水圧が高くても濡れる理由——防水を支える3つの要素

株式会社トキワ|雨を受けるレインウェアと、生地・袖口・前立ての防水構造を示すイラスト(耐水圧・レインウェア)

レインウェアは、生地を裁断し、縫い合わせ、衣服の形に仕上げて初めて製品になります。そのため、製品としての防水性能は、次の3要素を組み合わせて判断する必要があります。

要素役割購入・選定時の確認点
生地生地面から水を通さない耐水圧、試験方法、表面の撥水性、裏面の防水(樹脂)加工
仕立て裁断部や縫い目からの浸水を防ぐシームテープの有無、貼り方、縫い目が交差する部分の処理
デザイン水が浸入しにくいデザインにする袖口、フード、首元、ファスナー、前立て、ポケット、着用姿勢への対応

1.生地——耐水圧が直接示している部分

生地で水を防ぐ働きは、表面で水を弾く「撥水性」と、水が生地を浸透するのを防ぐ「防水性」の2つに分けられます。つまり撥水と防水は別ものです。表面の撥水性が弱くなっても、生地の防水性さえ保たれていれば、水が生地を通すことはありません。

レインナビゲーター®では、フッ素系撥水剤を使用しないC0撥水、高密度タフタの表地、裏面のTPUラミネートを組み合わせ、生地だけでも複数の要素で防水性を高めています。

2.仕立て——縫い目の針穴をどう塞ぐか

株式会社トキワ|2本針のミシン縫いの上にシームテープを熱圧着し、針穴を覆う構造のイラスト(レインウェアの防水加工・耐水圧)

どれほど耐水圧の高い生地でも、ミシンで縫えば生地には針穴が開きます。そのままでは、針穴が雨水の通り道になります。そこで防水性を必要とするレインウェアでは、縫い目の裏側にシームテープ(防水テープ)を熱圧着し、針穴を塞ぎます。この処理をテーピングと呼びます。

シームテープは「貼ってあれば終わり」ではありません。縫い目に沿ってしっかり溶着されているか、曲線部や縫い目が交差する部分の処理、使用中の摩擦や経年による剥がれも、防水性に影響します。なお、縫い目同士が十字に重なる「クロス縫製」は弱点と言われることもありますが、それだけで一律に悪いわけではありません。生地の種類、縫製方法、テープ処理の組み合わせで評価する必要があります。

3.デザイン——生地以外からの水の浸入を防ぐ

雨水は生地面だけでなく、袖口、首元、フード、ファスナーなどからも入る可能性があります。腕を上げる、かがむ、自転車やバイクに乗るといった動作で、ウェア内部へ水が浸入することもあります。これは耐水圧の試験では評価できません。

そのため、防水性を重視する製品では、二重袖、ファスナーを覆う前立て、ポケットの雨蓋、首元やフードの調整機構などを用いて、水が入りにくい構造を作ります。レインナビゲーター®は、これらの仕様を兼ね備え、二重袖や前立てなど、生地以外の浸水経路をなくすデザインにしています。

レインナビゲーター®を「生地・仕立て・デザイン」で見る

レインナビゲーター®の防水を3つの視点で評価する図解:生地(耐水度26,000mm/JIS L 1092 B法、高密度タフタ/C0撥水、TPUラミネートで水を通さない)/仕立て(全ての縫い目の裏側にテーピング、ミシンの針穴を水の通り道にしない)/デザイン(二重袖、前立て、ポケットの雨蓋、袖口やファスナーからの浸入を防ぐ)。結論:数値だけで製品を評価せず、仕立てとデザインなど複数の視点から製品を確認する

製品の防水性は、生地・仕立て・デザインの3つの視点で評価します。生地は物性の試験値が十分か、仕立ては縫い目にテーピングが施されているか、デザインは袖口など水が内部に浸入しにくい構造になっているかです。それぞれ何を確かめられ、防水上どういう意味を持つかを表にまとめました。

視点確認できる事実防水上の意味
生地耐水度26,000mm/JIS L 1092 B法、高密度タフタ、C0撥水、TPUラミネート生地面で水を通さない
仕立て全ての縫い目の裏側にテーピングを施すミシンの針穴を水の通り道にしない
デザイン二重袖、前立て、ポケットの雨蓋など袖口やファスナーからの浸入を防ぐ

26,000mmという数値だけで製品を評価せず、試験結果で生地の性能を押さえたうえで、仕立てとデザインなど複数の視点から製品を確認してください。

透湿性は「防水とは別の選定軸」として考える

大きな雨滴を防ぎながら小さな水蒸気を外へ逃がす防水透湿素材の概念図

透湿性とは、衣服内の水蒸気を外へ逃がす性質です。防水性と透湿性を両立する素材は複数のメーカーから提供されています。ただし生地の物性上、防水性と透湿性は基本反比例関係にあり、どちらを優先させるかという問題にも関連してきます。また、生地の数値は、対象製品の用途、縫い目のテーピング、水が入りやすい部分の設計とあわせて確認してください。

また、透湿度が高くても、気温、湿度、運動量、着用時間によっては蒸れます。反対に、衣服の内側が濡れたとき、雨水の浸入ではなく汗や結露が原因の場合もあります。本記事では防水の3要素に焦点を絞り、透湿性と蒸れについては関連記事で詳しく解説します。

法人のレインウェア担当者が確認したい6項目

法人の担当者がレインウェアの袖口や前立てをチェックするイラスト

法人ユニフォームとして選ぶ場合は、耐水圧の数値だけで比較せず、使用条件と製品構造を同じ表にして確認すると判断しやすくなります。

確認項目確認する内容
使用環境雨の強さ、着用時間、風、作業姿勢、自転車・バイク利用の有無
生地の試験情報耐水圧の数値だけでなく、試験方法と検査報告書の有無
縫い目の処理必要な箇所にシームテープがあり、交差部や曲線部にも縫い目に沿ってしっかりテーピングが施されているか
水が入りやすい部分の設計袖口、首元、フード、ファスナー、ポケットから水が入りにくいか
動きやすさ実際の作業動作で裾や袖がしっかり絞れているか、隙間が生まれにくいか
お手入れと保管方法正しい洗濯方法・乾燥方法で扱い、保管ができているか。使用頻度による製品自体の劣化も見込んでおく

耐水圧の数値は、候補を絞るための有効な指標です。ただし、最後の一着を決めるときは、生地・仕立て・デザインが使用環境に合っているかまで確認してください。可能であれば、サンプルを実際の作業姿勢で試着することをおすすめします。

耐水圧とレインウェア選びのFAQ

Q1.耐水圧が高ければ、絶対に濡れませんか?

いいえ。耐水圧は生地の物性試験値です。生地の数値が高くても、縫い目の裏面のシームテープがしっかり溶着されていなかったり、袖口・フード・前立て・ポケットなどから雨水が入ったりすれば、着用者は濡れます。製品全体は「生地・仕立て・デザイン」で判断してください。

Q2.耐水圧10,000mmと20,000mmは何が違いますか?

同じ試験方法・条件で測っている場合、20,000mmの生地は10,000mmの生地より強い水圧に耐えたことを示します。ただし、試験方法が違う数値は単純比較できません。また、この差だけで製品全体の防水性や快適性が決まるわけではありません。

Q3.「撥水」と「防水」は何が違いますか?

撥水は、主に生地表面で水を玉状にして弾く性質です。防水は、水が生地を浸透するのを防ぐ性質です。レインウェアでは、表面の撥水性だけでなく、生地の防水性がより必要です。さらに、縫い目の裏面に施されたシームテープが縫い目に沿ってしっかり溶着されているか、ウェア全体が水を内部に入れにくい設計になっているかまで確認してください。

Q4.縫い目から水が漏れるのはなぜですか?

縫製時にミシン針が生地へ穴を開けるためです。通常は裏側からシームテープで穴を塞ぎますが、テーピングを施していない製品、また貼り付けが不十分な場合や、摩擦・経年でテープが剥がれた場合は、針穴が浸水経路になります。

Q5.レインウェアの内側が濡れたら、すべて水漏れですか?

水漏れとは限りません。汗や結露による蒸れでも内側は濡れます。特定の縫い目や袖口・首元などだけが濡れているのか、衣服内全体が湿っているのかを確認し、判断できない場合はメーカーや販売店へ相談してください。

Q6.法人で選定するとき、最初に何を伝えればよいですか?

使用する業種、着用時間、作業姿勢、必要数量を伝えると、条件に合う製品を検討しやすくなります。「耐水圧や透湿性の数値」だけでなく、どのような環境で誰が使うかを共有することが重要です。

まとめ——耐水圧は重要。ただし、それだけで防水性は測れない

耐水圧は、生地の防水性能を比較するうえで欠かせない指標です。しかし、レインウェアは生地だけでできているわけではありません。縫い目を塞ぐテーピングの仕立てと、ウェア内への水の浸入を防ぐデザインがそろって、初めて生地の性能を製品として生かせます。

株式会社トキワでは、業務内容、着用時間、作業姿勢、必要数量などを伺い、法人向けレインウェアの選定をお手伝いしています。耐水圧の数値だけで判断することなく、お気軽にご相談ください。

執筆・情報提供:株式会社トキワ(1930年創業のレインウェアメーカー)

本記事の製品仕様・試験値は、トキワの製品ページ、品質検査報告書、開発者インタビューを基に記載しています。

参考資料

JIS L 1092:2025 繊維製品の防水性試験方法(日本規格協会)